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鴨川に「床」? ~京の風物詩~

2014年9月8日

こんにちは、スタッフの桑原です。
京都に引っ越してきた最初の夏。こんな会話を耳にして驚きました。
「もう床(ゆか)って始まってる?」「どうだろ?でも床で食べたいね!」
床が「始まる」?床で「食べる」? 何のことを話しているのか全く分からず、ぽかんとしたものです。

「床」とは「納涼床(のうりょうゆか)」のことで、5月~9月の間、鴨川のほとりの料理店やお茶屋さんが、川の上や川が見える場所に座敷やテラス席を作り、そこで料理を提供することを指します。(京都の北の方の場所は「川床:かわどこ」と呼びます)
川がすぐ下にあるので涼しいのはもちろん、せせらぎを聞いたり、川風を感じることで、美味しい食事がより格別なものと変わります。

実はこの床、豊臣秀吉の時代から始まっているのです。戦乱の後、秀吉公は三条・五条橋の架け替えを行い、鴨川が見世物や物売りで賑わうようになりました。裕福な商人が見物席を設けたり、茶店ができるようになり、これが現在の納涼床に続いています。昭和に入り、台風や第二次世界大戦の影響で一時禁止になったものの、戦後復活し、今では京都の夏の風物詩となっています。

今回、数ある料理店のうち、より京都らしさを味わうことができるように、豆腐料理を選びました。
御池木屋町にある「豆水楼」。鴨川沿いにある湯豆腐で有名な雰囲気の良いお店です。
お店に向かう狭い路地も、何だか隠れ家のような雰囲気が出ていて、胸が高まります。大きな提灯が目印のお店の暖簾をくぐると、元気な女将さんが迎え出てくれました。

冬に訪れると、まるでお豆腐がお風呂に入っているような形の湯豆腐をいただけるのですが、夏ということもあり、クラッシュアイスで冷たく冷やした「おぼろ湯豆腐」がメインでした。(しかもおかわり自由なんです!)そのお豆腐を、なんと専用のお豆腐箸でいただきます。一見折れそうなくらい繊細なお箸なのですが、柔らかい豆腐をしっかりととらえることができ、とても相性が良く、上品にお食事ができます。その他に旬のお料理5品が運ばれ、ちりめんしぐれのお茶漬け、豆乳とココナッツのシャーベットで締めとなりました。

冷たいものは冷たいうちに、温かいものは温かいうちにいただく。冷たい豆腐は大豆の味わいが深く、天ぷらは衣がカラッとしていて歯触りも舌触りも申し分ありませんでした。お茶漬け椀の千鳥も京都らしい可愛らしさ。

目で、鼻で、舌で味わえる和食。豆腐なのでお腹いっぱい食べても、重たい感じは全くありません。床で食べるお豆腐料理。外では夜風がそよいで、一足先に秋の訪れを感じる一日となりました。

※左:納涼床から見たお店、右:店内から見た納涼床